左官コラム
左官あれこれ
左官について
皆様は、左の写真のように土蔵の壁が白く塗ってあり、その下部(腰)が格子模様になっているものを見たことがあるでしょうか?
これは漆喰という石灰を使用した材料と、金属の鏝を使って壁を白く平滑に押さえたものです。その下(腰)の部分はなまこ壁といって、海にいる海鼠や魚の鱗がモチーフになったデザインと言われております。
こうした蔵は、江戸時代の商人など富裕層にとってはステイタスでした。
左官で作った壁は火に強いことから、大事なものが納められている蔵には竹などで作った木舞の下地に、土壁(荒壁)を塗り、漆喰などの塗り壁で化粧仕上げしました。
こんにちの左官工とは、ビルやマンション、工場などの建物で、セメントモルタルやセメント系の補修材という材料をタイル仕上げ、塗装仕上げなどの前段階の下地調整として補修する仕事が主な仕事になってきました。
大手ゼネコンさんの専門工事業者として、このような工事を請け負うのも左官工事です。
そう言う意味では左官工事はこの100年あまりでかなりの変遷を遂げましたが、本質は変わらないと思っています。
洗い出し、研ぎ出し、京壁、土壁、鏝絵など伝統工法も和風モダンのデザインが見直されたことによって、最近はまた需要も高まっています。
このような特殊技術を持つ左官職人の伝統技法を継承していくこともわれわれの使命と思っています。
住宅を施工する場合、左官で作った塗り壁には一つ大きなメリットがあります。
それは、空気中の湿度を調整する調湿作用、また有害物質や匂いを吸収してくれる効果もあります。特に珪藻土など多孔質の壁を室内壁に使用すると効果が高いです。
万が一の、住居火事では燃えにくく、有害なガスを出しにくいことはもちろんです。
専門工事業者としての左官工事
写真はRC造の工事現場で補修作業中の写真です。
このように、左手に木で作った鏝を持ち、右手で予め調合した補修材などの材料を塗りつけたりします。(職方が左利きの場合は逆です)
最近は、コンクリートにモルタルを直接厚塗りすることは少なくなりましたが、タイル下地
などの場合には剥落防止の観点から、超高圧洗浄や全面サンダー掛け~高圧洗浄をしてCMー2
と呼ばれるJIS規格の一材型の軽量モルタルを塗りつけることもあります。
野帳場といわれる、RC造などの大型現場では左官工は鳶職、型枠大工、鉄筋工の方々と
合わせて主職と呼ばれ躯体工事から仕上げ工事まで、わかりやすく言うと
現場の最初の方から最後まで携わる、建設現場にとって欠かせない職業です。
それでも、仕上げ面が表面に出ることは内外壁に塗り壁を施工するとき以外
主役になることはあまりなく、吹付塗装やタイルなどの下地作りという裏方的な
仕事が主流です。女性のメイクで言えばベースメイクというようなものです。
この他にも、RC構造の現場では、床にモルタルを打ったり、
サッシとコンクリートの隙間をモルタルで詰めたり、
階段の型を整えたりと様々な作業があります。
なまこ壁作成
◆火災に強い | 住んでいる人の家、財産を守ります。燃焼時に有害物質が少ない。 |
◆省エネ | 冷暖房効果が高く、経済的です。例えば、川越市の店舗に転用している蔵は夏場でも、自然にひんやりしており冷房が必要ありません。 |
◆結露しない | 建物を長持ちさせ、カビやダニの発生を防ぎます。クロスのように、継ぎ目が目立つこともありません。 |
◆健康に良い | ホルムアルデヒドなどの空気中の有害物質を吸着します。アトピーやアレルギーの心配が少ないです。 |
◆地球にやさしい | 基本的に自然素材ですのでエコロジーです。 |
◆安全性 | 古くから使われている素材で、安全性は実証済みです。 |
◆デザイン性 | 設計自由度が高く、クロスなどとは一線を画す質感の高い壁ができます。和風モダンなどアート的な壁も作れます。 |
◆手づくり感 | 左官工によりさまざまな表情を表現できます。 |
さまざまな鏝
当社に過去在籍していた授勲左官技術者(故人)の鏝(こて)を以前にお借りして、写真に撮影したものがあったので、一覧にしてみました。
主に、住宅や蔵などの漆喰壁や海鼠(なまこ)壁などの仕事によく使われた道具です。
小さいものは、役物や細かい作業をするのに適した道具たちです。
主に、住宅や蔵などの漆喰壁や海鼠(なまこ)壁などの仕事によく使われた道具です。
小さいものは、役物や細かい作業をするのに適した道具たちです。
丸窓つまみ面引きなど、珍しい鏝は、使用するチャンスがあったら一度施工風景を動画撮影してみたいです。
この中には、一本数万円もするものもあり、「道具は財産」として使用しないときはワックスなどを塗って、錆びないように大切に保管していたそうです。
職人の鏝(こて)は、長い長い歴史の中で改造され、淘汰され、これらの一本一本には機能美が凝縮されています。(H)
この中には、一本数万円もするものもあり、「道具は財産」として使用しないときはワックスなどを塗って、錆びないように大切に保管していたそうです。
職人の鏝(こて)は、長い長い歴史の中で改造され、淘汰され、これらの一本一本には機能美が凝縮されています。(H)